月別アーカイブ: 2025年9月

新菱工機のよもやま話~やりがい~

皆さんこんにちは!

新菱工機、更新担当の中西です。

 

~やりがい~

ビルの竣工や改修で、最後に“人の流れ”を生み出すのがエレベーター工事。
揚重・据付・芯出し・配線・調整・試運転・引渡し——一連のプロセスには、発注側の厳密なニーズがあり、現場には手応えのあるやりがいが詰まっています。実務目線で整理します。


1|まず押さえる価値軸:いま求められている“6つのS” 🧭

  1. Safety(安全):設置・運用とも事故ゼロ。法令・規格・保安装置の確実な機能。

  2. Stability(可用性):止めない・止まってもすぐ戻す。冗長・予兆保全。

  3. Smoothness(快適):停止精度・揺れ・騒音・ドア挙動の良さ。

  4. Speed(輸送効率):待ち時間短縮、群管理・行先予報の最適化。

  5. Sustainability(省エネ・LCC):回生・待機削減、ライフサイクル最適。

  6. Scrutiny(記録・説明責任):試験データ・写真台帳・ログで“見える品質”。


2|ステークホルダー別“リアルなニーズ” 📌

デベロッパー/オーナー

  • BCP(地震・停電時の自動着床、非常運転)

  • 省エネ・LCC(回生、待機削減、保全契約の合理化)

  • 短工期/夜間切替(稼働中ビルの改修で“翌朝通常運転”)

ゼネコン/設備統括

  • 納まりと干渉ゼロ(シャフト寸法、開口、意匠との整合)

  • 検査合格一次率(計測ログ・写真台帳の即提出)

  • 安全計画の確実運用(揚重・狭所・墜落・感電対策)

テナント・利用者

  • 待たせない・揺れない・静か

  • 非接触・入退室連動などのUX

メンテナンス会社

  • 保守性(点検スペース、ログ取得、部品選定)

  • 遠隔監視・予兆データとの接続性


3|技術的ニーズ:設計・据付・調整の勘所 🧪

  • 据付精度:ガイドレールの通り・レベル、機械架台のトルク管理、ロープ/ベルトの張力平衡

  • 電気・制御:VVVF・PMSMのパラメータ調整、ドア機器のクリアランスと安全光線

  • 輸送効率:群管理/行先予報の設定、混雑時間帯プロファイル

  • BCP:地震時管制、停電時自動着床、復旧シナリオの事前合意。

  • 省エネ:回生の帰路設定、待機スリープ、かご換気・照明の制御。

  • 記録:速度・停止精度・振動・騒音・ブレーキ・過速試験をログで可視化


4|“やりがい”はどこにある?(役割別)✨

  • 据付(機械・鉄骨):数十メートルのガイドがミリ単位で真っ直ぐ通る快感。

  • 電気・制御調整:パラメータ一つで乗り心地と待ち時間が目に見えて改善する達成感。

  • 試運転・引渡し:試験表が全項目一発合格、オーナーの“静かだね”のひと言。

  • リニューアル夜間隊夜間切替→翌朝通常運転を実現する“台本仕事”の誇り。

  • 保全・改修:ログから兆候を見抜き止まる前に直す。誰も困らない一日をつくる満足。

  • PM:建築・電気・警備・テナントを束ね、予定どおりGo-Liveさせる統合力。


5|“選ばれる会社”の差別化ポイント 🧩

  1. 段取り設計力:搬入・揚重・仮置き・夜間切替を一枚工程で可視化。

  2. BIM/図面整合:シャフト寸法・開口・インサートを事前照合、干渉ゼロ。

  3. 安全の型化:昇降路内の墜落・感電・挟まれ対策をチェックリスト運用

  4. 試験データの即時性:デジタルログ+写真台帳を当日提出

  5. 保守連携:遠隔監視や群管理設定をメンテ側と共同チューニング

  6. LCC提案:新設/更新/モダナイゼーションの3プラン比較(電力・保守・更新費)。


6|“今日から”使えるヒアリング10項目 ✅

  1. 積載・速度・台数 2) シャフト寸法・開口 3) 機械室有無(MR/MRL)

  2. BCP要件(地震・停電対応) 5) 待機電力・回生の希望

  3. 非接触・入退室連動の要望 7) 稼働中工事の可否・夜間制約

  4. 引渡し期日と検査基準 9) 既存設備の流用範囲 10) 保守契約と遠隔監視の方針


7|提案が通る「Good / Better / Best」💡

  • Good(基本):標準VVVF+PMSM、標準BCP、省エネ基本設定、検査ログ提出。

  • Better(運用強化):+ 群管理最適化、回生最適、非接触UX、遠隔監視接続、夜間切替台本込み。

  • Best(高信頼・LCC重視):+ データ連携(ビルBAS)、予兆保全ダッシュボード、エネルギー最適化、更新・保守を束ねたLCCプラン。
    → 各プランに待ち時間・可用性・電力・LCCの期待値を添えると意思決定が速い。


8|KPIで“価値”と“やりがい”を可視化 📊

  • 品質・安全:試験合格一次率、是正ゼロ項目数、休業災害ゼロ日数。

  • 可用性:ダウンタイム(分/月)、復旧リードタイム、ログ欠損率。

  • 輸送効率:平均待ち時間、ピーク時の処理台数、群管理改善率。

  • 省エネ:回生量、待機電力、運用後の電力削減率。

  • 顧客:検査立会満足、引渡後クレーム率、再発注・指名率。


9|よくある“つまずき”と回避策 🧯

  • シャフト寸法差異 → 事前のBIM照合/3D計測、現場でのスペーサー・金物準備。

  • ガイド通り不良 → レーザー基準で中間検査、レールジョイントの面直・トルク再確認。

  • ドア挙動のムラ → クリアランス・バネ・光線調整を記録手順化

  • 夜間切替でのトラブルGo/No-Go基準・ロールバックを台本化、予備機材・人員先置き。

  • 試験データの遅延 → ロガーのテンプレ化、当日クラウド共有


10|ニーズは“選ばれる理由”、やりがいは“続ける力” 🌟

エレベーター工事は、安全×可用性×快適×省エネ×データを“段取りと精度”で形にする仕事。
ニーズに型で応えるほど、一発合格・定刻引渡し・翌朝の安定運転が当たり前になり、
現場には**「今日も人の流れを作った」**という確かなやりがいが残ります。

 


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新菱工機のよもやま話~変遷~

皆さんこんにちは!

新菱工機、更新担当の中西です。

 

~変遷~

 

ビルに命を通す最後の工事がエレベーター。
吊り込み・芯出し・配線・試運転という“黒子”の仕事は、技術・法規・社会の変化とともに大きく姿を変えてきました。ここでは戦後〜現在〜これからを、現場目線で一気にたどります。


1|〜1970年代:量の時代—機械室×リレー制御の黄金期

  • 大量供給:都市化に合わせ、学校・病院・集合住宅に次々と新設。

  • 機械室あり(MR):巻上機・制御盤は屋上機械室、駆動は交流二段制御やワードレオナード+DCが主流。

  • 工事の勘所:ガバナ・安全装置の調整、ガイドレールの通り(芯)出し、機械の据付レベル。

  • 安全文化:点検口や足場の整備が発展途上で、段取り=安全が現場の掟。

キーワードは**“とにかく動かす・止めない”**。快適性よりも可用性が優先されました。


2|1980–1990年代:制御の転換—マイコン×VVVFで“滑らかさ”へ

  • マイコン化群管理(複数台の最適配車)や故障セルフ診断が実用域に。

  • VVVFインバータ:誘導電動機を可変電圧・可変周波数で駆動。乗り心地・停止精度が飛躍的に向上。

  • ギヤレス化の萌芽:高効率モータ採用が進み、省エネ・低騒音の基礎が整う。

  • 工事の変化:制御配線の多芯からハーネス化、調整は波形・パラメータを見る時代に。

「速い・正確・静か」の三拍子が、エレベーターの新しい評価軸に。


3|2000年代:省スペースとバリアフリー—機械室レス(MRL)とPMSM

  • 機械室レス(MRL):**永久磁石同期モータ(PMSM)**が小型化し、巻上機を昇降路上部に内蔵。機械室のない設計が標準へ。

  • 省エネ設計回生電源・LED照明・待機電力低減、回生電力の再利用が一般化。

  • バリアフリー:かご寸法のユニバーサル化、ホームボタン高さ・点字・音声などのアクセシビリティ強化。

  • 工事の勘所:機械室から昇降路内作業が増加揚重・落下防止・狭所作業の安全策を厳密化。

「省スペース・省エネ・誰でも使える」が発注要件の中心に。


4|2010年代:レジリエンスとIoT—“止めない・見える”を仕組みに

  • 地震・停電対策地震時管制運転(EEO)・停電時自動着床(ARD)・ロープ揺れ抑制などBCP仕様が普及。

  • IoT監視:遠隔で状態監視・ログ回収・予兆保全。メンテは**定期→状態基準(CBM)**へ。

  • 高層・混雑対策ダブルデッキデスティネーション制御で輸送能力を最適化。

  • モダナイゼーション:ビルは残して制御盤・巻上機・ドア機器を更新する改修市場が拡大。

“取り付けて終わり”から**“運用まで設計する工事”**へ役割が拡張。


5|2020年代:スマートビル統合とデジタル施工—データが品質を語る

  • スマホ連携・非接触:入退室と連動、タッチレス呼び・行先予約が一般化。

  • クラウドVMS:複数棟の稼働・混雑・故障をダッシュボードで可視化、省エネ運転の自動最適化

  • デジタル施工:BIM連携・3Dスキャンでシャフト寸法を事前検証、レーザーでガイドレール芯出し。試験成績はクラウド台帳へ。

  • 人手不足対応ユニット化・プレハーネス・治具で段取り勝負。夜間・短工期のリニューアルが増える。

価値の中心は**“データで説明できる可用性・安全・快適”**。


技術・ディテールの進化(要点サマリ)

  • 駆動:AC二段/ワードレオナード → VVVF+ギヤレスPMSM → 回生・最適運転。

  • 制御:リレー → マイコン → 群管理・デスティネーション → クラウド最適化。

  • 保安:ガバナ・セーフティの定番に加え、地震・火災・停電の自動モード。

  • 省エネ:LED・換気制御・回生、待機スリープで基本負荷を削減。

  • 施工:機械室据付中心 → 昇降路内作業中心(MRL)レーザー計測×BIMで手戻り減。

  • 試運転:速度・停止精度・振動・騒音・ブレーキトルク・過速試験をデジタルロガーで記録。


ニーズの変遷:何が“選ばれる理由”になってきたか

  1. 安全とレジリエンス:事故を“起こさない”だけでなく、起きても早く復旧

  2. 可用性と輸送効率待ち時間の短さ、混雑時の配車賢さ。

  3. 省エネ・LCC:初期費だけでなく電力・保全・更新までの総額最適。

  4. データの説明責任検査・試験・アラートの記録を可視化できること。

  5. 施工力(段取り):稼働中ビルの夜間・短工期リニューアルをノートラブルで完走できる体制。


現場の“やりがい”はこう進化した(役割別)✨

  • 据付ガイドの芯がゼロで通る、静かに滑る乗り心地を調整で作り込む快感。

  • 電気・制御:パラメータと配車ロジックで待ち時間が目に見えて縮む達成感。

  • リニューアル:稼働中の建物で夜間に切り替え、翌朝通常運転を実現する“台本仕事”の手応え。

  • 保全:ログから未然に止める。**「今日は誰も困らなかった」**が最大の誇り。

  • PM:建築・設備・警備・テナントを束ね、予定どおりGo-Liveさせる統合力。


“今日から”役立つ:計画〜試運転チェックリスト ✅

計画

  • シャフト寸法・インサート・開口のBIM照合/3Dスキャン

  • 揚重・搬入動線、夜間切替の台本(Go/No-Go基準・ロールバック)

  • 停電・火災・地震モードの試験項目合意

据付・配線

  • ガイドレール通り・レベル記録/マシン架台トルク管理

  • ロープ・ベルトの張力平衡、ガバナ・セーフティの機能確認

  • ドア機器のクリアランス・安全光線、非常救出手順の掲示

試運転・引渡し

  • 速度・停止精度・加減速度・振動・騒音の測定ログ

  • 回生電力・待機電力・群管理のチューニング結果

  • 取扱説明・非常対応、点検モードの教育クラウド監視の接続確認


これからの10年:エレベーター工事の行き先

  1. BIM to Fieldの常態化:設計→切断リスト→据付→試験ログまで一気通貫

  2. 状態基準保全の本格化加速度・電流・温度・振動を常時計測し、交換時期を予測

  3. エネルギー統合:回生電力の建物側再利用、非常時はバッテリー走行で避難を支援。

  4. スマートアクセス連携:入退室・EVが一体のUXに。混雑・省エネの最適化が自動化。

  5. 人材の“二刀流”:据付+デジタル、電気+運用のハイブリッド技能が評価軸に。


エレベーター工事は“流れを生む最後の一手”

機械室の時代から、MRL・IoT・クラウドまで。
価値は「動く」から**“安全に、速く、静かに、止めずに”へ、さらに“データで証明する”へ。
段取り×ディテール×記録で再現する工事力こそ、これからの
選ばれる理由です。
そして、引渡しの日に
人の流れが生まれる瞬間**——それがこの仕事の変わらないやりがいです。✨

 


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