月別アーカイブ: 2025年4月

新菱工機のよもやま話~設計~

皆さんこんにちは!

新菱工機の更新担当の中西です。

 

さて今回は

~設計~

ということで、エレベーター据付工事における設計のポイントを、現場視点と法的背景の両方から詳しく解説します。

 

エレベーター据付工事における設計の重要性とは?

高層化・複雑化が進む建築物において、エレベーターは今や欠かせない「縦のインフラ」です。
その据付工事の品質・安全・機能を左右する最も重要な工程が、設計段階です。

エレベーターの設計は、単に「箱を上下させる仕組み」ではなく、建築・機械・電気・法令・利用者安全のあらゆる要素が交錯する極めて専門的な領域です。


✅ そもそも「エレベーター設計」とは?

エレベーターの設計は、次の3つの要素で構成されます

分類 設計内容の例
建築設計 昇降路の大きさ・階高・開口部・ピット・マシンルームなどの寸法・構造
機械設計 駆動方式(ロープ式・油圧式)、制動装置、定格速度・積載荷重など
電気設計 制御盤配置、通信用配線、呼び出し装置・照明・非常用電源の仕様

✅ 建築設計との連携がカギ

エレベーターの設計は建築設計と完全にリンクして進める必要があります。
以下のような要素は、事前に十分な協議が必須です。

🔹 昇降路(シャフト)の寸法と精度

  • 有効内寸(幅×奥行)により対応できるエレベーターの機種が限定される

  • 機器据付に必要なクリアランス(余裕寸法)も確保が必要

  • 間違った寸法設計は、後からの手直しが極めて困難

🔹 ピット・マシンルームの設計

  • 最下階のピット(最低1.2~1.5m程度)が必要

  • マシンルーム式の場合は、屋上または最上階に機械室が必要(天井高さ・開口部の確保)

  • 機械室レスタイプ(MRL)も増加中 ⇒ 省スペースだが仕様に制約あり


✅ 機械設計:用途に応じた仕様選定が肝心

🔸 駆動方式と性能

  • ロープ式(巻上機式):高層ビル向け、静音性・スムーズな昇降

  • 油圧式:低層建物向け、設置が比較的容易

  • MRL(マシンルームレス):近年主流、省エネ・スペース削減

🔸 定格荷重・定員・速度

  • 荷物用/乗用/寝台用など、使用目的に応じた容量と速度を設定

  • 法令上、用途に応じた制限速度と構造要件あり


✅ 電気設計:制御と安全の司令塔

エレベーターは、精密な電気制御システムにより安全運行を実現しています。

🔸 主な電気設計要素

  • 主制御盤・インバーター・操作パネル・通信用配線

  • 呼び出しボタン・液晶表示・音声案内などのUI設計

  • 停電時の非常電源(バッテリー/発電機)との接続設計

  • 火災報知・非常用通話(管理室連動)との設備連携


✅ 法令・安全基準への適合も重要

エレベーターの設計には、以下のような法令・基準の遵守が求められます。

法令・基準 主な内容
建築基準法 構造・防火・出入口の有効幅など
労働安全衛生法(昇降機構造規格) 定期検査・巻上機の性能・非常用装置など
日本エレベーター協会基準(JEA) 安全装置・避難対応の標準化
JIS規格 材料品質・電気部品・操作部の設計指針

👉設計段階でこれらに合致していないと、完成後の検査不合格につながる重大リスクとなります。


✅ 設計段階で見落としがちな注意点

項目 解説
防水対策 ピット・機械室の雨水侵入リスク対策
換気・空調 マシンルームやかご内の熱対策を忘れずに
工事中通路確保 据付作業に必要な重機・搬入スペースの計画
メンテナンス性 点検口、作業スペースの確保は将来に影響大

✅ まとめ:エレベーター設計は“安全・機能・未来”を描く仕事

エレベーター据付工事の成否は、設計段階の精度と情報共有の質にかかっています。

  • 建築構造との整合性

  • 用途に応じた機器仕様の選定

  • 電気系統の接続・制御設計

  • 法令・安全基準の完全な遵守

これらを網羅的に把握し、利用者の安全と快適性、施工性とメンテナンス性まで配慮した設計が求められます。

設計とは、「完成後の未来を先に見ること」。
エレベーターという建築設備の“要”を担う設計者こそ、安全と利便性をつなぐ見えない設計士なのです。

 

お問い合わせは↓をタップ

新菱工機のよもやま話~確認事項~

皆さんこんにちは!

新菱工機の更新担当の中西です。

 

さて今回は

~確認事項~

ということで、エレベーター据付工事における事前確認事項のポイントを、実務の流れに沿って深く解説します

 

「動いて当たり前」を実現するために、見えない準備がカギ

エレベーターは、高層化が進む現代建築に欠かせない縦の移動インフラです。
中でも据付工事は、高所作業・重量機器・電気制御が複雑に絡む高度な専門工事であり、
施工後のトラブルや手戻りを防ぐためにも、事前確認が極めて重要となります。


✅ エレベーター据付工事とは?

エレベーター据付工事とは、建築物に新たにエレベーターを設置する工事であり、
次のような工程を含みます

  • 鉄骨レールの取り付け

  • 吊りワイヤ・カウンターウェイトの設置

  • 制御盤・ドア・呼びボタンの取り付け

  • 動作確認・安全試験・法令に基づく検査

これらは建築・電気・機械の要素が密接に絡むため、関係業種との連携と準備が不可欠です。


✅ 事前確認①:建築工事との整合性チェック

🔹 建築側の工事進捗・受け入れ体制

  • 昇降路(シャフト)内の清掃状態・養生

  • 電源(仮設/本設)の通電状況

  • ピット(最下部)・マシンルーム(機械室)の仕上がり確認

  • 建物の水平・垂直精度(レベル出しの基準)

👉Point: 建築側で未完了の部分があると、据付作業が遅延・中断する可能性があります。


✅ 事前確認②:図面と設計仕様の最終確認

🔹 設計図と実際の構造との照合

  • 図面に基づいた昇降路寸法・開口部の確認

  • 機種・積載荷重・停止階数・操作パネルの仕様が合っているか

  • 納品機器と現場寸法の“実測比較”(干渉・寸法誤差の事前発見)

🔹 特殊仕様の有無

  • 車いす対応・防災対応(耐震・火災時管制)などの確認

  • デザイン仕上げ材(ステンレス/化粧シート等)との整合性


✅ 事前確認③:安全対策と作業環境の整備

🔹 作業者の安全確保

  • 昇降路内の墜落防止設備(手すり・ロープ等)の設置確認

  • 安全帯・ヘルメット・無線等の支給状況

  • 養生・立入制限の表示(第三者の転落・接触を防止)

🔹 重量機器の搬入ルート

  • ウインチ・チェーンブロックの設置計画

  • 重量物(巻上機・カウンターウェイト等)の搬入方法と安全確認

  • 通路・仮設床の耐荷重チェック


✅ 事前確認④:電気工事との連携確認

🔹 通電・制御関連

  • 電源容量・分岐盤の位置確認

  • アース接続位置・制御盤スペースの確保

  • 消防設備・インターホンとの連動配線の有無確認

🔹 本設電源の引き込みタイミング

  • 通電の予定日が据付工事と整合しているか

  • 試運転や動作確認の前に仮設で済むかどうかの判断


✅ 事前確認⑤:関係者との工程・情報共有

🔹 工程表のすり合わせ

  • 建築/設備/内装との干渉防止と作業分担の調整

  • 段階的な資材搬入スケジュールの確認

  • 雨天・突発対応の想定含めた柔軟な工程設定

🔹 通信・共用設備との関係整理

  • 呼び出しボタン・カメラ・インターホンとの連携確認

  • 非常時通報システムの受信先(管理人室・警備会社等)の確認


✅ エレベーター据付は「事前確認8割、施工2割」

エレベーターは、建物完成後に長期間使い続けられる重要な設備です。
そのため、「とりあえず設置する」では済まされません。

  • 安全性

  • 設備機能の正確な実装

  • 他工種との整合性

  • 法令・検査対応の万全化

これらはすべて、施工前の段階で“確認し尽くしておく”ことが必要条件です。

エレベーターが「当たり前に動く」建物は、
現場の見えない準備とプロの連携によって支えられているのです。

 

お問い合わせは↓をタップ

ブログ更新をはじめました。

今後ともよろしくお願いいたします。