皆さんこんにちは!
新菱工機の更新担当の中西です。
さて今回は
~設計~
ということで、エレベーター据付工事における設計のポイントを、現場視点と法的背景の両方から詳しく解説します。
目次
エレベーター据付工事における設計の重要性とは?
高層化・複雑化が進む建築物において、エレベーターは今や欠かせない「縦のインフラ」です。
その据付工事の品質・安全・機能を左右する最も重要な工程が、設計段階です。
エレベーターの設計は、単に「箱を上下させる仕組み」ではなく、建築・機械・電気・法令・利用者安全のあらゆる要素が交錯する極めて専門的な領域です。
✅ そもそも「エレベーター設計」とは?
エレベーターの設計は、次の3つの要素で構成されます
分類 | 設計内容の例 |
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建築設計 | 昇降路の大きさ・階高・開口部・ピット・マシンルームなどの寸法・構造 |
機械設計 | 駆動方式(ロープ式・油圧式)、制動装置、定格速度・積載荷重など |
電気設計 | 制御盤配置、通信用配線、呼び出し装置・照明・非常用電源の仕様 |
✅ 建築設計との連携がカギ
エレベーターの設計は建築設計と完全にリンクして進める必要があります。
以下のような要素は、事前に十分な協議が必須です。
🔹 昇降路(シャフト)の寸法と精度
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有効内寸(幅×奥行)により対応できるエレベーターの機種が限定される
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機器据付に必要なクリアランス(余裕寸法)も確保が必要
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間違った寸法設計は、後からの手直しが極めて困難
🔹 ピット・マシンルームの設計
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最下階のピット(最低1.2~1.5m程度)が必要
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マシンルーム式の場合は、屋上または最上階に機械室が必要(天井高さ・開口部の確保)
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機械室レスタイプ(MRL)も増加中 ⇒ 省スペースだが仕様に制約あり
✅ 機械設計:用途に応じた仕様選定が肝心
🔸 駆動方式と性能
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ロープ式(巻上機式):高層ビル向け、静音性・スムーズな昇降
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油圧式:低層建物向け、設置が比較的容易
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MRL(マシンルームレス):近年主流、省エネ・スペース削減
🔸 定格荷重・定員・速度
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荷物用/乗用/寝台用など、使用目的に応じた容量と速度を設定
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法令上、用途に応じた制限速度と構造要件あり
✅ 電気設計:制御と安全の司令塔
エレベーターは、精密な電気制御システムにより安全運行を実現しています。
🔸 主な電気設計要素
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主制御盤・インバーター・操作パネル・通信用配線
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呼び出しボタン・液晶表示・音声案内などのUI設計
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停電時の非常電源(バッテリー/発電機)との接続設計
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火災報知・非常用通話(管理室連動)との設備連携
✅ 法令・安全基準への適合も重要
エレベーターの設計には、以下のような法令・基準の遵守が求められます。
法令・基準 | 主な内容 |
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建築基準法 | 構造・防火・出入口の有効幅など |
労働安全衛生法(昇降機構造規格) | 定期検査・巻上機の性能・非常用装置など |
日本エレベーター協会基準(JEA) | 安全装置・避難対応の標準化 |
JIS規格 | 材料品質・電気部品・操作部の設計指針 |
👉設計段階でこれらに合致していないと、完成後の検査不合格につながる重大リスクとなります。
✅ 設計段階で見落としがちな注意点
項目 | 解説 |
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防水対策 | ピット・機械室の雨水侵入リスク対策 |
換気・空調 | マシンルームやかご内の熱対策を忘れずに |
工事中通路確保 | 据付作業に必要な重機・搬入スペースの計画 |
メンテナンス性 | 点検口、作業スペースの確保は将来に影響大 |
✅ まとめ:エレベーター設計は“安全・機能・未来”を描く仕事
エレベーター据付工事の成否は、設計段階の精度と情報共有の質にかかっています。
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建築構造との整合性
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用途に応じた機器仕様の選定
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電気系統の接続・制御設計
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法令・安全基準の完全な遵守
これらを網羅的に把握し、利用者の安全と快適性、施工性とメンテナンス性まで配慮した設計が求められます。
設計とは、「完成後の未来を先に見ること」。
エレベーターという建築設備の“要”を担う設計者こそ、安全と利便性をつなぐ見えない設計士なのです。
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